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漆の縮みについて
金継ぎをはじめるとき、まず直面するのは「漆風呂」の管理。
漆は空気中の酸素、水素と化学反応(酸化重合)して硬化するため、
条件を満たす「湿度」が必要です。
“漆が乾く”という表現はしますが、
漆の中の水分が蒸発して乾燥するというわけではありません。
諸説ありますが漆が乾くには、
湿度60〜70%・温度23〜28℃が最適です。
漆を乾かす際に作品を入れておく戸棚のことを「漆風呂」と呼びます。
一般的には木製のものが多いですが、
ご自宅で金継ぎをされる場合、段ボールで十分なんですよ。
ちなみに私たちの工房ではガラス製のものを使っています。
下にヒーターが入っていて、冬の温度管理もばっちりです。
そして、各段に濡らして絞ったタオルを敷いています。
季節に応じて絞り方を変えたり、
梅雨の時期は湿さないようにします。
というのも
湿度を高くしすぎると“漆が縮む”ことがあります。
湿度だけの問題ではなく、温度の問題や
漆を厚塗りし過ぎても縮む場合があります。
こちらはガラスの板に試験的に黒呂色漆を塗ったテストピースです。
上の段は通常の塗面、下の段が縮んだ塗面です。
下の段は意図的に厚塗りをしています(ちょっとやりすぎました)。
見事にしわしわしていますね。
この時の条件は湿度80%・温度27度でした。
梅雨の時期、風呂に湿しを入れると
湿度は80%くらいになってしまいます。
そこに厚塗りをしてしまうと、内側までうまく乾かずに縮んでしまうのです。
上記のことから、梅雨時期は厚塗り厳禁!ということです。
それから下手に湿さないこと。
もし縮んでしまったら、
ナイフやピンなどで縮み部分に穴を開け、
乾くまで待ってから研ぎ落とします。
研いでも研いでも跡が消えない…となることもしばしば。
そんな時は工程を戻らないといけません。
失敗したくないから湿度計を導入しよう!
と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、
湿度計がなくても、
雨が降っていたりジメジメした日には湿さない
などルールを決めると失敗が少ないですよ。
前述した通り塗りの厚みも関係してくるので
この季節は特に薄く塗ることを心がけましょう。
そして裏を返せば、この季節はとっても漆が乾きやすいです。
金継ぎをはじめるにはもってこい!
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文‥石橋 茜